魚の締め方にもコツがある!
カヤック上でやる神経締めの段取り
◆ 魚を釣った後が「本番」だったと気づいた日
最初は、「釣ること」ばかりが目的でした。
どれだけ釣れるか。どんな魚が釣れるか。それが楽しくて、夢中で海に出ていた日々。
でも、ある日気づいてしまったんです。
**「釣った後、どうするかで味が全然違う」**という事実に。
陸に上がってから仲間と釣果を比べる中で、
同じ魚、同じサイズ、同じ場所で釣ったはずなのに、
「身がやたらと締まってる」「ドリップが少ない」「臭みがない」そんな声が出る。
それ、神経締めをしたかどうかで決まっていたんです。
◆ でも…カヤック上で神経締めってできるの?
最初は、無理だと思ってました。
正直、「神経締めって、船の上でスペースがある人がやるもの」だと思っていた。
カヤックは狭いし、魚も暴れるし、なにより水面がすぐそこにある。
でも、いろいろ試した結果…
ちゃんと段取りを整えれば、カヤック上でも神経締めはできる。
むしろ、カヤックだからこそやった方がいい。
そう感じるようになったんです。
◆ カヤック神経締めの“事前準備”が9割
大事なのは、魚を釣ってから段取りを考えるんじゃなくて、釣る前に「締める段取り」を用意しておくこと。
僕の定番セットはこれです:
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神経締めワイヤー(20〜25cm程度/持ちやすい太さ)
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ナイフ(血抜き用)
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ペンチ or 魚掴み
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小型クーラー or 魚袋+氷水
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タオル(魚を抑える用)
この5つをすぐに取り出せる位置に配置。
「釣れてから考える」では遅い。
釣れる前提で段取りしておくことが、落ち着いて締めるコツです。
◆ 実際の手順:釣れたら、まず暴れさせない
青物でも根魚でも、釣った直後の魚は興奮してます。
まずは魚掴みやフィッシュグリップでしっかりホールド。
僕は、片膝で魚を軽く抑えながらナイフを取り出します。
ポイントは、暴れて暴れ疲れるまで放置しないこと。
体内に乳酸が回ると、身に影響が出ると言われています。
できるだけ短時間で締めに入りましょう。
◆ 手順①:即座に脳締め
ナイフで目とエラの間あたりを刺して、まずは脳締め。
ビクン!と跳ねる反応があれば、決まった証拠です。
この段階で魚はすでに意識が飛んでいる状態。
暴れにくくなるので、ここからが本番。
◆ 手順②:エラの下から血抜き
次に、エラの下を切って、血抜きをします。
潮が出る方にカヤックを向けておくと、血が流れやすくて◎。
水を張ったビニール袋に魚を一時的に入れてもいいですし、
バケツ的なコンテナに沈めて、自然に血を抜く方法もあります。
ここで10分ほどしっかり血を抜いてあげると、
後で捌いた時の身の白さと匂いが全然違います。
◆ 手順③:ワイヤーで神経締め
血抜きが済んだら、いよいよ神経締めです。
神経締めワイヤーを、脳締めした穴(または目と目の間)から背骨沿いに通します。
魚種によって通りやすさは異なりますが、
スッと通った時の「魚体のビクッとした反応」があれば成功。
このとき、カヤックが揺れてもいいように、両膝で魚を軽く挟むように固定しています。
注意したいのは、焦って一気に突っ込まないこと。
ワイヤーが曲がったり、神経に届かなかったりすることがあります。
◆ 手順④:即クーラー or 魚袋へ
神経締めが終わった魚は、すぐに冷やすこと。
僕は、氷水を入れたソフトクーラー or 魚袋を船尾に設置しておいて、
終わったらすぐそこに入れています。
できれば、ワイヤーを入れたままの状態で冷やすとベスト。
神経が断たれたままの状態をキープすることで、身質の劣化を防げます。
◆ あの時、神経締めをしていれば…
これは、今でも悔やんでいる話なんですが。
ある日、マダイの60アップを釣ったことがありました。
そのとき、潮が速くてバタついていたし、まだ釣れそうな反応が出ていた。
「今締めるより、まずは次を狙おう」と欲張ってしまったんです。
結果——。
そのマダイ、血も抜けず、暴れて身もボロボロに。
持ち帰って捌いたとき、白い身じゃなく、うっすらグレーがかっていた。
「釣れたこと」に満足して、「魚を美味しく持ち帰ること」に失敗した瞬間でした。
◆ カヤックアングラーこそ、締めまでが釣り
スペースが狭くて不安定なカヤック。
でも、だからこそ、魚を大事に扱う意識が大事になると思います。
「どこで」「どう締めて」「どう冷やして持ち帰るか」
この3つを自分のスタイルに落とし込んでおくと、
1匹の魚から得られる満足感が、劇的に変わります。
◆ “美味しく食べるための締め”を忘れずに
カヤックフィッシングは、魚との距離も、人との距離も近い釣り。
だからこそ、「釣った後の魚の扱い」までこだわることで、釣りの深みが出てくると感じています。
神経締めは難しい。最初は失敗するかもしれない。
でも、ちゃんと向き合えば、確実に結果が変わってくる技術です。
カヤックの上でできる、最大限のリスペクト。
それが、神経締めなのかもしれません。