ロッドが1cm動くと魚が散る?静かに釣るための無音キャスト術
――気配を消せるかどうかで釣果は変わる
【共感】「近くにいるのに釣れない」その原因、音かもしれません。
ある日、穏やかな朝マズメのタイミング。
水面は鏡のように静かで、遠くにはボイルも見える。
「これはチャンス」と思ってロッドを構えた瞬間、自分の肘がちょっと何かに当たった音が耳に入る。
その直後、水面から出ていたベイトの波紋が一瞬で消える。
遠くのボイルも、ぴたりと止まった。
魚がいなくなったのではない。
気配を感じて、逃げただけ。
この経験、実は1回や2回ではありません。
特にシャローエリアや水深が浅いポイントでは、1cmのロッドの動きが魚に伝わることがあるのです。
釣れない日って、実は「騒ぎすぎてるだけ」かもしれません。
【課題】「気配」は、魚にとって一番の警戒サイン
カヤックやSUPなど、水面に近い釣りではとくにその影響が大きくなります。
■ 魚は音だけでなく「振動」も感じている
水中に伝わる音は空気中よりずっと速く、そして遠くまで届きます。
だからこそ、以下のような何気ない動作が**“逃げられる原因”**になるのです。
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ロッドをホルダーから雑に抜いたときの「カチャン」
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ギアを置くときの「ゴトッ」
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キャスト時にブレた体重移動による艇の揺れ
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ドラグ音やラインの“バチン”という音
静かな水面ほど、それらは拡張マイクのように響き渡ります。
【気づき】「気づかれない投げ方」ができると釣果は激変する
この問題に気づいたのは、ある1尾のチヌがきっかけでした。
静かな入り江にSUPで浮かびながら、サイトでチヌを探していたときのこと。
3m先の海底に、完璧な位置に良型チヌが定位しているのを見つけました。
「これはもらった」と思い、そっとロッドを上げて、キャスト。
――“カツッ”
ロッドのブランクがロッドホルダーに少し当たった、そのたった1音。
チヌは一瞬で尻尾を振って逃げました。
見えていた魚だけに、これは本当にショックでした。
でも、この失敗が教えてくれたのは明確です。
「音を出した瞬間、すべてが終わる。」
それ以来、「無音キャスト」「無音モーション」を意識するようになりました。
そして、気配を完全に消すことが釣果につながると確信したのです。
【解決】無音キャストを身につける3つのポイント
魚に気づかれずに仕掛けを届けるためには、3つのポイントを抑える必要があります。
① ロッドをゆっくり持ち上げる“モーション制御”
魚が警戒するのは、「速い動き」です。
特に魚の視野内での急なロッドアクションや、ラインの振れは致命的。
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ロッドは地面と平行になるように滑らかに
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ティップが水面から急に飛び出さないよう注意
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無駄な“ビュン”という振りを避ける
ポイントは、“忍者のように”動くこと。
動き出しと終わりを静かに、丁寧に。
② フルキャストより「押し出す」感覚でのピッチング
遠くに飛ばす必要がないとき、あえて振りかぶらない。
キャスト音を抑えるには、ラインをコントロールしながらルアーを押し出すイメージが有効です。
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軽いルアーなら下手投げで
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ラインの出だしを調整し、“フッ”と投げる
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ティップを使って“持ち上げて落とす”ように投入
見た目の迫力はないですが、これが静かに仕掛けを入れる最短ルートです。
③ キャストの直前は「息を止める」ほどの集中を
最後は自分の音をゼロにするマインドです。
たとえば、ルアーを結び終えてから投げるまでの動作を最小限にする。
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ギアは元の場所に戻す
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体勢を安定させる
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呼吸を整える
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ロッドの角度を調整
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「スッ」とキャスト
ここで注意すべきは、投げたあとのルアー着水音も含めた無音設計です。
着水直前に**サミング(ライン制御)**を入れて、チャポンと落とすのではなく「ストン」と落とす。
【実践】無音キャストで初めて獲れた“目の前の1尾”
無音キャストを意識してから、明らかに変わったことがあります。
「見えてる魚が釣れるようになった」こと。
とくに夏場のシャローで、岸際を回遊するチヌやシーバスに対して、
以前なら届いた瞬間に逃げていたのが、ルアーを無音で届けるとそのままバイトに至る。
もうひとつの効果は、回遊魚の足止め。
ナブラに向かって雑にキャストすると、魚はすぐに沈んでしまいます。
でも無音で、かつ“気配を消した”キャストをすると、魚がこちらを意識せずにその場に残ってくれる。
これは本当にデカいです。
【提案】「音を出さない釣り」を一度、本気でやってみてほしい
無音キャストは技術というより“意識”です。
最初は少し面倒に感じるかもしれません。
でも、一度その世界に足を踏み入れてみてください。
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見えていた魚が釣れる感動
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何もせずに魚が寄ってくる驚き
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水面が生きているように感じる静けさ
「ただの音」が、どれほど魚の行動に影響を与えていたか、
きっと体感できるはずです。