釣り開始3分で道具が水没…“落下トラブル”はなぜ起きるのか?
──あの瞬間、ただ海面を見つめることしかできませんでした。
【共感】「あっ…」と声に出たときには、もう手遅れでした
ある夏の日の早朝、いつものようにカヤックを海に出しました。
風も波も穏やかで、空はすっきりと晴れ渡り、完璧な釣り日和でした。
準備もバッチリ。ルアーケースには信頼のお気に入りたちを詰め、気合も十分。
出艇してから5分ほど。
ロッドをセッティングし、ルアーを選ぶためにケースを開けました。
ちょうどそのとき、カヤックが軽く揺れたのです。
「え?」と目をやったときには、
ルアーケースが滑るように艇の縁から落下し、そのまま海の中へ。
「うそでしょ……」と声が漏れました。
手を伸ばしても届かず、ただ海面に沈んでいくケースを、黙って見ているしかありませんでした。
数千円、いや万単位のルアーたちが、静かに海の底へと吸い込まれていくのを見ながら、
私は釣り開始わずか3分で、心が折れました。
【課題】落下トラブルは“特別な失敗”じゃありません
釣り道具の落下というと、
「不注意だったんじゃないの?」と思われるかもしれません。
でも、実際に経験してみるとわかるのですが、
本当に一瞬の揺れや動作で、あっけなく物は落ちていきます。
しかもカヤックは陸と違い、足元が狭く不安定。
「今は置いて大丈夫だろう」と思っていたはずの場所から、
道具がスルッと滑って海に落ちてしまうことは、珍しくありません。
ルアーケースに限らず、
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プライヤーが滑り落ちた
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スマホがポケットから飛び出した
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ロッドを立てかけていたつもりが風で倒れた
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魚を掴んだ勢いでグリップごと落とした
など、**“あってほしくないけれど、誰にでも起こりうる現象”**なのです。
【気づき】「大丈夫だろう」は一番危険な思い込みです
私がルアーケースを落としたとき、
正直なところ「注意していたつもり」でした。
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カヤックに乗る前に収納位置も考えていた
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ケースのフタも閉めていた(と思っていた)
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波は穏やかだった
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足元に置いておけば安全だと思っていた
けれど、どれも「つもり」にすぎませんでした。
特にカヤックの上では、“固定されていないものはすべて落ちる可能性がある”
──この意識が、私には完全に抜けていたのです。
そう気づいたのは、道具を失ってから。
そしてそのとき、もう取り返しはつきませんでした。
【解決】“沈めない”ための準備を徹底することにしました
その日以来、私はカヤック釣行時の道具管理を一から見直すことにしました。
特に意識したのは、「落とさない」ではなく、「落ちても沈まない」「戻せる」準備をすることです。
たとえば以下のような工夫を始めました。
■ ルアーケースをストラップ付きに変更
ケース自体に紐やストラップをつけ、カヤックのデッキロープに繋いでいます。
これで万が一滑り落ちても、水面に浮いてくれる構造です。
■ プライヤー・フィッシュグリップには落下防止コード
コードでライフジャケットやシート脇に繋いでおくだけで、
海に沈むリスクが一気に減りました。
■ スマホは完全防水ケース+リーシュ装着
記録用としても必須のスマホですが、意外と落としやすいアイテムです。
浮力付きケースに入れ、しっかり身体側に固定するようにしました。
■ カヤック上の「道具置き場ルール」を明確に
道具をどこに置くか、どう戻すかを事前に決めておくと、
咄嗟の行動でも迷わなくなり、自然と落下リスクも減っていきました。
【実践】“落下を想定しておく”だけで、気持ちが軽くなりました
今では、多少風が出てカヤックが揺れても、
「大丈夫、大事なものは全部繋いである」と思えるだけで、釣りへの集中力が保てています。
以前は、釣りをしながらも
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「あの道具、飛んでいかないかな」
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「足元滑らせたら終わりだな…」
と、どこかビクビクしながら海に浮いていました。
けれど今は、「落としたくない」よりも「落としても大丈夫」と考えることで、
余計な不安がなくなり、ファイト中の判断や仕掛け変更もスムーズになりました。
準備ができていると、人は安心できるんだと実感しました。
【提案】“海に持って行く=一度は落とすかもしれない”と考える
釣り道具の落下トラブルは、ちょっとした油断ではありません。
誰でも、いつでも、何度でも起きうるものです。
でもだからこそ、最初から「落ちるかもしれない」と思って準備をしておけば、
釣行そのものがぐっと快適になります。
道具を海に預ける気持ちで、
そしてその道具たちがちゃんと戻ってくるように、
次の釣行では少しだけ「落下防止のひと手間」を加えてみてください。
釣れた・釣れないよりも、まずは道具を無事に持ち帰れること。
それが、釣り人としての大切な心得だと、私はあの日の海で学びました。